『医と人間』(井村裕夫編 岩波新書)を読んでいます。 「再生医療と創薬」ではノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥先生がiPS研究について述べられております。山中先生はiPSは再生医療としてよりも創薬に活路が大きいことを強調されていました。再生医療もどんどん進展していますが、iPS細胞を使ってヒトの血液や皮膚からいろんな細胞を作り出し、難治疾患によく効き副作用の少ない薬剤を見つける方が、今は効果が大きいのだとのことです。しかし、国の研究予算は再生医療ばかりで、創薬研究には振り向けられないことを嘆かれています。
山中先生はNHKスペシャル『人体』でもきさくに冗談を交えて医学研究の話をされていて、さすがは関西の方だなと感心しました。(https://www.nhk.or.jp/kenko/special/jintai/sp_1.html)
もっと感動したのが、「21世紀のがん医療」間野博行先生でした。遺伝子研究からがん細胞の原因遺伝子を探し出し、創薬につなげたのです。海外で行われた治験(新しい治療薬を試す臨床研究)に日本の患者さんを紹介し、自ら患者さんに会いに行かれています。患者さんが自分の発見した治療薬で元気になるのを見て、「自分が、がん研究という道を選んできたのは、今日この場所にいるためだったのだ」と知らされたと言います。医療者・医学研究者にとって何が大切かを痛感させられます。
朝日新聞を読んでいると、慈恵医科大学小児科の勝沼俊雄教授が小児喘息の治験のためのクラウドファンディング(一般の方からの資金集め)をされている記事がありました。日本でも最近は、こうした資金提供者を寄付で募ることがようやく始まったそうです。小児喘息の新しい薬剤の効果を確かめるために研究を続けておられるものの、効果的な薬のため投薬量が減って、逆に製薬会社からの寄付が集まらないというのです。本当に患者さんのための研究をすることの難しさを感じました。(https://readyfor.jp/projects/difto)
私も分野は違いますが、医学研究をする者として応援させていただきました。